よく「脚から」と言われる。脚力が一番大事とも言われる。
ローイングは「脚」から始まって、次に「上体」、最後に「腕」。
脚力が一番強いということもあって、
弱い腕はできるだけリラックスして、ぶら下がるだけ、
上体もできるだけ開かずに、
脚で真横に強く押そう、とボート競技と初めて出会ったときから、
当たり前のように言われていた。
脚の力がほとんどだから、
上半身の力より、
脚の力が大事だよ、とも。
でも、思うんです。
「違くね?」と。
例えばデッドリフトをするとき、
脚からでしょうか。
ハイプルやデッドリフトは、
ローイングとの相関が非常に高い種目(強い人がローイングも強い確率が高い)で、
自分としてもほとんど同じだと思っているけど、
それでもハイプルやデッドリフトの始まりは
脇、上半身だと思う。(実際に挙上するための筋肉はもちろん下半身)
まず体とバーを一体にするために、脇を固める、上半身を固める。
その後、初めて下半身や股関節周りの筋肉を使って挙上するのが、
ハイプルやデッドリフトだと思っている。
もし上半身がゆるゆるの状態、悪い意味で脱力した状態だと、
お尻だけが上に上がってバーが挙がらない。腰が抜ける。
だから最初は、脇。上半身。
そしてそれはローイングであっても同じだと思っている。
水(バー)を掴むのは、脇であり上半身。
掴んでから、初めて脚や股関節周りの筋肉を使って船を大きく動かす。
そしてその動かしの後半にまた腕を使う。
だから、ローイングにおいて、
「脚→上半身→腕」ではなくて、
「脇→脚&上半身→腕」なのではないかと思っている。
脇を閉める筋肉というか、体温計を脇に挟むときの筋肉というか、
そこの力と同等のパワーしか、脚&上半身のパワーは発揮できない。
それ以上のパワーを発揮しても、尻逃げするだけなんじゃないか。
「脚の筋力が一番強く、腕の筋力は弱いから、脚をメインに使おう」
というのは、確かにその通りのように感じていたけど、
もし、「腕の筋力以上、脚・腰の筋力を使えない」のであれば、
「もっと腕、脇周りの筋トレをしようね」っていう考え方になる。
「脚を鍛えよう」とは別の話。
ローイングというのは、本当に「抜けやすい」競技、動作だと思っています。
言い換えれば、空回りの競技。
脚の力が過大すぎて、還元率100%のパワーをグリップに伝えることが難しい。
だいたいの人が先にお尻が動き、遅れてグリップがやってくる。
グリップがある程度胸元に進んだ時には、
先にお尻が進んでしまった分、ドライブ後半には脚は伸びきっていて脚力は使えず、
弱い腕引きの力だけに頼ってしまう。だから最後まで船を進めることが難しい。
だから対処としてレンジを切る、途中でブレードを抜く、そういう現象が起こる。
(途中で抜く原因に関してはほかにもいろんな要因があるけど)
最近いろんなYouTube動画を発信していますが、
日本におけるローイングが、より発展するためにも、
ああいってる人もいる、こう言ってる人もいる、
その中で、自分はこれだと「今は」思っている、
そんな選択肢がある世界が必要だと思っています。
そういう世界に、ローイングの楽しさがあると思っています。
ただ漕ぐ、ただきついトレーニングをすれば勝てる、
そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。
創意工夫の先にある勝利を、私は求めていきたい。
そっちの方が、楽しそうだから。
コメント
野球のバッティングの指導でも、よく下半身や腰から動かせ、という指導がありますが、三冠王で有名な落合博満さんは、バットを振るときはまず最初に手から動かせ、と言っていました。
つまり、胴体から動かすと、手が胴体の開きについて行けずに悪いスイングになると。
私は落合さんのその話を聞いたとき、どこの世界も似てるなと思いました笑
素晴らしい話をありがとうございます!