2009年に、U23世界選手権に出場した時、
初めて日本人ではない、外国の人が漕いでいるのを見た。
なぜ彼らは速いのか、どこが上手いから速いのか、
当時は何を見ればいいのかも全くわからなかったけど、
そんな時でさえ、衝撃的だったのは、
腕漕ぎの上手さだった。
今も思う。
腕漕ぎがめちゃくちゃうまい。
2009年から、10年近く、海外のローイングを見たけれど、
毎回思った。
めちゃくちゃ上手い、と言うか、
彼らの腕漕ぎは別競技、
別のものを追い求めている。
日本の腕漕ぎは、
腕漕ぎという短い中で、
いかに進めるか。
足で押すか、
最後の最後まで押しきれるか。
そこを意識して、
そこを求めて練習している。
腕漕ぎをしている。
だけど、彼らは違う。
別に腕漕ぎで船を進めようとか、そんなことを思って漕いでない。
タイミングよく入れて、タイミングよく抜く。
綺麗に入れて綺麗に抜く。
グリップの動きがしっかり回るように、
グレードの動きが滑らかになるように、
そんなことを気にしながら漕いでいる。ように思う。
擬音語でいうなら、
日本は「ギュン、ギュン、ドン、ドン」
世界のうまい国は「ポン、ポン、トン、トン」
といったところだろうか。
おそらく、それらが原因で、
彼らはリリースの時にそんなに音がならない。
上手な国ほど、静かだ。
リリースがうまくいってない国ほど、ガコンガコンうるさいことが多い。
残念ながら毎年の世界選手権のビデオなど、レースビデオでは、腕漕ぎのシーンがほとんど映らないが、
岸けりしたすぐ、本メニューに入る前など、必ず後ろまわりの練習をするので、
そうした機会、特に東京オリンピックを観戦予定の方はぜひ、そういったメインではない端っこのシーンを見てみてほしいと思う。
大学の時、先輩が
「二流の常識は、一流の非常識」
と言っていて、それをこの前思い出し、
常識を常に疑わねばならないなと思っている。
あまりにも何も信じなかった故に、遠回りしたこともとても多いが、
今の学生が、追い求めた先に、必ず良いゴールがあるように、
Coachの語源は「連れていく」だったと思うが、
ちゃんと、「ゴールに」連れて行けるように、
とりあえずは、そうした腕漕ぎから
伝われば良いなあと思いながら、
あれやこれや、しゃべっているここ最近です。
また、現役最後の方で、やっとわかったのは、
腕漕ぎは、オールを抜く練習だけではなく、
むしろオールを入れる練習だということ。
腕漕ぎを、力強く漕ぐ練習だと考えてしまうと、
どうしてもブレードが逆三角形のような動きになりますが、
腕漕ぎの中で、限界まで戻らず入るようになれば、真四角になり、
フルレンジのエントリーでも逆三角形、蹴り戻るということはほぼなくなります。
他にも、腕漕ぎがうまくなれば、
船から離れにくくなります。
船から離れなくなれば、フォワードが楽になるので、
1秒漕いで1秒休むレート30のリズムであれば、
6分レースが3分になります。
船から離れる原因は他にもありますが、
船から離れる漕ぎは、ハイレート6分=6分がんばる
という漕ぎになるので、どうしても疲れやすく、
2000m持ちません。結果レンジを短くして体力を温存しようとします。
強い腕漕ぎから、滑らかな腕漕ぎへ。
結果的に強くなってればそれでよく、
強さからではなく滑らかさから求めた方が、
よりゴールにたどり着きやすいと思っています。
コメント