ボートという競技は、小さな動きの反復運動です。
だからこそ、本質を見失ってしまえば、いくらでも脱線できる競技だと思っています。
逆に言えば、本質さえ見失わなければ、それなりの技術が身につく競技だと思っています。
学生に教えているのは、
まず、体の本質的な部分。
腰を振って、力が出るということ。
体の要と書いて腰、そこをいかに使うかが、
体の動かし方として、最も大事なんじゃないかと思って、
そう教えています。
スクワットにしろ、ジャンプにしろ、
野球、ゴルフ、大体のスポーツは、
腰を折って開くを繰り返したり、腰を回転させたり、
腰の動きが起点となって、膝や、肩甲骨、肘、
最後に手足につながっていく。
そう思っています。
ボートは特に座ってするスポーツなので、
かなり腰を振ります。
スイープなら折るし捻るし、開くし
沢山の可動域が必要とされます。
ボートの場合で言うと、
いわゆるセットの姿勢が、腰回りの筋肉が固くてできない選手の場合、
かなり上達が遅くなるでしょう。
腰が寝たままエントリーした場合、かなりの確率で腕肩に、負荷がきて、
お腹に負荷をかけることができません。
抜けた漕ぎにつながります。
肩で漕いでしまう選手の多くは腰がゴロンと寝た状態で
エントリーに向かっています。
腰を寝かせると力が出ないだけではありません。
バランスを取るためにも必要です。
例えばバランスボールの上に立ったとき、地震が起きたときなど、バランスを取らなければならないときに、自然に腰を立てるように、
腰はバランスを取るためにも立てなければなりません。
漕いでいてバランスが取れない選手の多くは
腰を寝かせたまま、エントリーに向かっています。
バランスを取れない状態でいる時間が長ければ長いほど、
バランスは取れないので、
特にブレードが水の中にない、空中に浮いていて船が不安定な場面では、
なるべく腰が寝ている時間をなくさねばなりません。
それがバランスを取る、すらないで漕ぐためのコツだと思っています。
多くのスポーツが、むしろおそらく全てのスポーツが
腰を立てて力を発揮しているのと同様、
ボートの場合も、できるだけ腰を立てて漕いだ方が
肩の力を使わずに、お腹や背筋、一番大きな筋肉を使って
そして安定的に漕ぐことができます。
テニスにしろ、ゴルフにしろ、野球も、道具を使う全ての選手は、
いろんな打ち方、振り方をしていて、何が正しいのか全くわかりませんが、
腰を寝かして打っている人はゼロでしょう。
「腰が引けている」と言う日本の表現が、悪い意味であるように、
力を出すときに腰を寝かせてはいけません。
力を出す、安定する、と言う意味以外においても、
「集中する」ためには、腰を立てる必要があります。
数年間の短い期間でしたが勤めていた会社のトップの方々、
オリンピックを通じてお会いできたトップアスリートの方々など、
多くの方が立ち姿は、綺麗です。猫背であることは稀です。
人前に立つことが多いから矯正されたのか、
そもそもそういう「集中しやすい」体だったから、伸びたのか、わかりませんが、
綺麗に立っている方がほとんどです。綺麗に立てる人は、綺麗に座れる可能性が高いですので、きっと集中して仕事や練習ができるのではないかと思います。
だから学生には、腰回りのストレッチを薦めています。
ボートをうまくなるためにも、
これから始まる社会人生活をより実りあるものにするためにも、
日々の生活や練習、受験勉強などで凝り固まった股関節を緩めてほしい。そう思っています。
・腰を立てる
・腰を寝かさない
・腰をふる
疲れていても、腰がゴロンとならないような、
筋肉や意識で体を支えるのではなく、骨格そのもので体を支えられるような、
その結果、無駄な力が抜け、本質的な力のみが出力されるような
そんな柔軟性を得てほしいなと思っています。
学生の、より良い漕ぎとより良い未来のために、
よりよい指導を探します。
コメント