目標設定は必要なんだろうか。と思う。
巷ではよくそういう目標設定の重要性とか、
モチベーションの維持、向上のためには目標設定が必要不可欠、
いい目標設定とは、達成する可能性が50、達成しない可能性が50の目標だ、
というけれど、
そもそも、何に対する目標設定をすべきなのか書いてないし、
そっちの方が大事だろうと思う。
みんな「インカレ優勝」が目標だというけれど、
いやいやインカレ優勝は現実味がないから「決勝進出」だと言うけれど、
そもそもなぜ、インカレを目標にするのか。
そもそもなぜ、その目標を達成したいのか、達成失敗したくないのか。
高校や大学だったら、毎年毎年、部員が変わる。
誰かが卒業し、誰かが入学する。
みんな違う人だし、もともとボートに有利な人間もいれば、
もともと不利な体格な選手もいる。
毎年違う選手で構成されるチームなのに、
なぜ毎年同じ目標設定を掲げないといけないのか。
目標は「今をより強く生きる」ためにあると思う。
つまり集中力だ。集中力を高めるために目標があるだけ。
集中力が、ボートを漕ぐ上でも、強くなる上でも、
より良い選手、より良い人間になる上でも、必要なのだと最近思っている。
今に集中できるか。
今に没頭しているか。
目の前の人を大事にできるか。
今やっていることに全神経集中しているか。
今日1日をちゃんと生きる。
この時間、今やっていることに集中する。
その一瞬一瞬を積み重ねることができた選手こそが、
「充実した選手生命だった」と言えるのではないかと思う。
人生の充実度は、成功したか、失敗したかではなく、
「集中できたか」どうかのように思う。
目標を達成できたかどうか、じゃない。「濃かったか」どうかだ。
時間を忘れて、我を忘れて、
目の前のことに没頭できるか。
あと何キロ漕がなきゃいけないとか
引退まであと何日もあるとか
ボート選手にとって、練習は常に過酷だから
未来への想像は絶対に暗い。だからしないほうがいい。
ある程度、こんな人間になりたいと決めて、
それが今を強く生きるために十分な動機になるのであれば、
それ以上詳細な目標設定はいらないと思う。
未来は想像した以上に騒がしいし、
未来を当てられる人は残念ながらいない。
いるのは、今していることをちゃんとやっている人といない人。
一瞬一瞬を真剣に生きて、
それが部全体に広まって、みんな今志向になれば
いつか掲げていた「目標」とやらが叶うんではないかと思っている。
そして叶わなくても、充実してたんだからそれでいいんじゃないかと思う。
いい目標がいい未来を約束するんじゃない。
いい今がいい未来を約束する。
コメント
中野紘志さん
はじめまして。いつも中野さんの文章を楽しみにしております。
私にとって、人生の過程、職業、その他(ボート、オリンピック、一橋)全く異なりますが、中野さんの言葉がとても頭の中の風通りを良くしてくれます。
目の前のささいなこと、毎日の自分の気持ち、一番分かるはずのことが分からず、こんがらがってヘンテコに考えてしまいます。
しかし、中野さんの言葉は元気が出ます。そして自分の向く方向を毎回見直すきっかけとなっております。
ありがとうございます!