走っても走っても、半日・一日休んだら追いついてきて、
「おい、弱くなるぞ」
「それでいいのか」
とつぶやいてくる、そんな「何か」にずっと追いかけられていた。
2020年3月、
東京五輪に向けた日本代表選考があり、途中で負け、
32歳という年齢、次の五輪に向けて36歳で戦えるかと考えた時に
今以上の良いイメージを抱けなかったので、引退することにした。
(まさか報道していただけるとは。。。有難うございます。)
引退を決めたものの、
コロナで日本代表選考がそもそも途中で終わってしまい、
来年、また日本代表選考となると、
私は再挑戦できるのかもしれない、
挑戦できるなら、どうしよう。
ただ、今の私がどう考えようと、
挑戦権の有無を決めるのは自分ではないから、
とりあえず引退して、ボートと距離を置く。そうした。
1ヶ月経って今思うのは
私は何かに追われていた。
何かというのは、何だろう。
もう何年間も、
どれだけ練習で疲れていても、
「全力を尽くしたのか、甘えじゃないのか」
「休んだら弱くなるぞ」
「丸一日休むなんて大丈夫か」
そんな声を唱え続ける、そんな声の主に追われていた。
妻が気分転換にディズニーランドに誘ってくれても、
次の日の練習だったり、そのための今日夜寝る時間だったり、
どんな夢の世界に行っても、そいつは追ってきていた。
妻にとっては大いにヒンシュクであったろう。大いに陳謝したい。
今はもう、
何もない。
誰も、何も、追ってこない。
貯金がちょっとずつ減っていく、
5年前、無職になった時に経験した
懐かしいほがらかな痛みだけ。
引退して1ヶ月経って、やっと文章を書く気になれたのは、
何者かに追いかけられる、そんな状況から、
何かを追いかける、何かを生み出そう、
そういう精神状態に変わったからだと思う。
よかった。
ただただ時間が経って、通常体に戻っただけかもしれないし、
別に私は「世界中の億万長者」の一人ではないのだけど、
「心」に惹かれたのだろうか、
一番の本音はAmazonの読み放題で0円で読めるというところに惹かれたのだが、
今の自分に大きく響く本だった。
私はきっと変わっていく。
復帰しようとも、このまま引退しようとも、
何かを追いかけていこうと思う。
5年前にハローワーク行った時に、
大体の求人が「35歳以下の方」だった35歳にもう近づいていく。
それでも、何でも、
自分は何かを追いかけていこう。
声の主は、決して自分を強くはしてくれなかった。
ディズニーランドを楽しませてくれなかった。
私は私を生きていく。
何年後かの明るい未来を追いかけて。
とりあえず今は、家族との時間を大事にしようと思う。
コメント
中野選手
東京大学4年でボートをしている岩井雅裕と申します。ブログを楽しみに読んでおります。ボート選手として今まで本当にお疲れ様でした。
大学からボートを始めた自分にとって、中野選手にはアスリートとしてのマインドセットを教えてもらい、懸命に戦い続ける姿からは勇気や感動をもらいました。ありがとうございます。
これからのご活躍を楽しみにしております。
コメントありがとうございます。
そう言って頂けると、漕いでよかったなとまた強く思うことができるので大変有り難く思います。
東京大学ボート部はじめ、すべてのボート部が、こんな2020でも良い一年だったと思える一年となることを願っています。